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周期性四肢麻痺

疾患の解説

骨格筋の弛緩性麻痺のエピソードを繰り返す一群の疾患の総称である。病名から発作が一定周期でおこるような誤解を与えるが、発作間隔は不規則である。また麻痺という言葉が筋疾患の病名に使われることは周期性四肢麻痺以外にほとんどない。四肢(一部のこともある)や体幹の骨格筋の麻痺をきたすが、呼吸筋麻痺をきたすことはきわめてまれである。血清カリウム濃度の異常により心電図の変化をみることは多いが、一部の例外をのぞいて心機能に異常をきたすことはまれである。
病態上発作時の血清カリウムの値により
1)低カリウム性周期性四肢麻痺Low serum potassium periodic paralysis
2)高カリウム性周期性四肢麻痺High serum potassium periodic paralysis
遺伝性かどうかにより
1)一次性(家族性)Primary (familial) periodic paralysis
2)二次性(非家族性)Secondary (non-familial) periodic paralysis
に分類される。
典型的な発作であれば、随意的収縮のみならず、腱反射も電気刺激による収縮も消失するか減弱する。

一次性周期性四肢麻痺:

Andersen-Tawil症候群:

以下の3徴をもち、17q23.1-q24.2に遺伝子座のある常染色体優性遺伝の疾患。内向き整流カリウムチャンネル (KCNJ2) の変異によることがわかっている。
1) 周期性四肢麻痺:発症4−18歳 発作中の血清カリウムは低下することが多いが正常あるいは上昇することもある。ミオトニアなし。運動後の安静で誘発されるが、高炭水化物食では誘発されない。アセタゾールアミド有効。
2) 異形症:低身長、両眼隔離、広鼻根、下顎低形成、舟状頭、口蓋裂、低耳介、側彎、彎曲指などさまざまな異形症がみられる。
3) 心室性不整脈:QT延長症候群、心室性頻脈、心室性二段脈などが知られ突然死することもある。

甲状腺機能亢進症に合併する周期性四肢麻痺:

東洋人に多い。圧倒的に男性に多い。通常二次性周期性四肢麻痺に分類されるが、CACNA1S遺伝子に確認されている12の単一ヌクレオチド多型(SNP)のうち3つの特定の多型(5’側非翻訳領域の多形とのイントロン領域の多型2つ)が甲状腺機能亢進症に罹患時、周期性四肢麻痺の発症感受性に関係することが知られている。甲状腺機能亢進症の程度とは必ずしも関係しない。周期性四肢麻痺は甲状腺機能亢進症を伴わない低カリウム性周期性四肢麻痺と区別できない。

二次性周期性四肢麻痺 :

カリウムが高値あるいは低値となるさまざまな病態で発症する。
低カリウム性
尿中の排泄の増加をきたす病態 (腎疾患 尿管結腸吻合)
薬剤使用(グリチルリゼート、低カリウム血症をきたす利尿薬)
消化管からの喪失(嘔吐、下痢)
甲状腺機能亢進症

高カリウム性
アジソン病
薬剤(スピロノラクトン など)
腎不全
カリウム過剰投与

診断と検査

発作時の血清カリウム:

発作時の血清カリウムは低カリウム性の場合0.9—3.0mEq/L、高カリウム性の場合5.0mEq/L以上。病型の診断に不可欠であるが、発作からの回復の過程では一過性に反対の結果を示し、誤った病型診断の原因となるので注意を要する。血漿TSH, free T3, free T4 は隠れている甲状腺機能亢進症を発見できるので必ず測定する。甲状腺機能亢進が存在するときは治療が不可欠である。

血清CK値:

血清CK値は低カリウム性では通常正常だが発作回復期に上昇することがある。高カリウム性では発作間も軽度の上昇を示すことが多い。

筋電図:

・針筋電図  発作中は運動単位電位の減少ないし消失。非発作期に脱力の残る患者は筋原性変化を示す。筋強直放電は高カリウム性において(臨床的に筋強直がなくても)みられることが多いが、低カリウム性では一部の例外を除いて認められない。
・周期性四肢麻痺では最大筋力の随意的筋収縮を行うと複合筋活動電位の振幅が小さくなることが知られている。短時間と長時間の運動試験を行うことにより周期性四肢麻痺を診断士その型を推定する方法が提案されている1)2)3)。

心電図:

血清カリウムの異常を伴うので12誘導の心電図が必要であるが、心室性不整脈のあるAndersen-Tawil症候群の場合は突然死の予防がきわめて重要であり、定期的にHolter心電図を実施することが大切である。

病理:

筋線維内の空胞(筋小胞体の拡張)、細管集合体tubular aggregate(筋小胞体の増殖) 。実施されることはほとんどない。

誘発試験:

低カリウム性ではブドウ糖インスリン負荷、高カリウム性では経口カリウム負荷で麻痺発作を誘発できれば、診断を確定できるが、不整脈誘発の可能性があり危険性を考えると実施はすすめられない。どうしても実施する場合は血清カリウムと心電図をモニターしながら行う。

遺伝子検査:

一次性周期性四肢麻痺の場合は診断上最も決定的な検査であり、すでに遺伝子臨床相関もかなり詳しい知見が得られているので、有用性は疑うべくもないが、残念ながら日本では実施できる施設は少ない。

診断と鑑別診断:

病歴から容易に周期性四肢麻痺を疑うことができる。発作に遭遇できれば、典型的な症状と血清カリウム値から容易に診断を確定できる。先天性パラミオトニア(paramyotonia congenita) :寒冷によってミオトニアが誘発。運動負荷によって も誘発される(exercise induced paradoxical myotonia)。高カリウム性周期性四肢麻痺と同じ麻痺の 発作を起こすことがあり、異同が問題となっていたが、同じ遺伝子の変異であることが判明した。

診断と検査

治療方針:

一次性か二次性か、低カリウム性か高カリウム性かの鑑別をすることが治療への第一歩である。二次性の場合は原因をとりのぞけば発作はおこらなくなると考えられるので、原因疾患の治療を行う。一次性であろうと二次性であろうと発作時の治療の目的は筋力の正常化であるが、目標は血清カリウム値の正常化であって筋力の正常化ではない。筋力の回復は血清カリウム濃度の正常化より何時間も遅れることがあり、過補正を防ぐため、補正にあたっては筋力のみならず必ず心電図と血清カリウム値をモニターする。非発作時は発作予防を目的とした生活上の注意と内服を行う。

薬物療法:

発作時
低カリウム性周期性四肢麻痺
1)カリウム製剤大量内服を行う。胃腸刺激作用が強く大量の水(ブドウ糖の含まれている液体は不可)にとかして服用あるいは経管投与する。
処方例 
アスパラK散(K2.9mEq/g)あるいは グルコン酸カリウム(K4mEq/g)あるいは 塩化カリウム末(K13.3mEq/g)を体重1kgあたり0.2−0.4mEq 経口あるいは経管で1−3時間にわたり30分おきに投与する。
2)経口・経管投与が原則だが、消化管潰瘍の存在や胃腸症状などのため耐えられない場合は、カリウムの経静脈的投与を考慮する。発作を誘発する可能性があるブドウ糖液は避ける。生理的食塩水もできれば避けたい。 処方例 5%マンニトール液500mL+塩化カリウム10−20mEq 250−500mL/hrで持続点滴
3)甲状腺機能亢進症では重篤な発作もみられ、カリウム補充療法も行われるが、近年ではβ遮断薬(プロプラノロール)の併用が安全で有用とされている4)5)。

高カリウム性周期性四肢麻痺
1)多くの場合発作は軽度で持続時間も短いためそのまま様子をみることもある。発作開始時に炭水化物食やブドウ糖(体重1kgあたり2g)を経口摂取してもよい。
2)高カリウム血症による致死的な不整脈を防ぐ目的で、重大な心電図の変化があるときはカルシウム製剤の投与を行う。患者によってはこれで発作が終了することもあるという。
処方例
カルチコール(8.5%グルコン酸カルシウム)10~20mlを2~5分かけて静注.
3)β2刺激薬である気管支拡張薬サルタノール(サルブタモール)吸入(1回100μg)を2回吸入する。
4)その他、糖質コルチコイド、ループ利尿薬の点滴静注など。

一次性周期性四肢麻痺の非発作時
いずれの型に対しても炭酸脱水素酵素阻害薬アセタゾールアミドの予防内服が一般的である。SCN4Aの特定の変異による低カリウム性周期性四肢麻痺の場合アセタゾールアミドによって症状が増悪することが知られている。
処方例
ダイアモックス(250mg)1−3錠 分1−3 経口
アセタゾールアミドが無効な場合、副作用で使えなくなった場合や長期使用で効果が減弱した場合は他の薬剤が使われる。
低カリウム性周期性四肢麻痺
1)アルダクトンA(50mg) 1−2錠 分1−2 経口
2)さらに経口カリウム製剤を併用することもある。
スローケー(600mg) 3−6錠 分1−2経口
高カリウム性周期性四肢麻痺
1)フルイトラン(2mg) 1−3錠 分1−3 経口
2)ダイクロトライド(25mg)1錠 分1 毎日あるいは隔日  効果をみながら2−3錠 分2−3まで増量する

患者指導

発作を予防するための生活指導:発作を誘発する因子を避ける。高カリウム性、低カリウム性ともに、激しい運動や寒冷暴露を避ける 。
低カリウム性では低炭水化物高カリウム食をこころがける。
高カリウム性では 高炭水化物低カリウム食をこころがけ、食事を頻回に分けるなどできるだけ空腹を避ける。発作は休息を多くとるウィークエンドなどに多いが、早く起きて朝食をしっかりとるようにする。
麻酔に関する注意:CACNA1Sはリアノジン受容体RYR1遺伝子とならんで悪性高体温症の関連遺伝子として知られている。高カリウム性の場合もミオトニアを悪化させて悪性高体温症の発症の可能性がある。高カリウム性、低カリウム背性ともに全身麻酔前後に脱力を来すことがある。全身麻酔を受けるときは麻酔医に適切な情報提供が必要である。

リハビリテーション

発作は多くの場合は筋力低下を残さずに回復するので、リハビリテーションは不要である。一部の患者(低カリウム性、高カリウム性ともに)では慢性の進行性ミオパチーを示すことがある(paralytic form)。その場合は一般の筋力低下を伴うミオパチーと同様の対応が必要になる

文献

1)Streib EW: AAEE minimonograph #27: differential diagnosis of myotonic syndromes. Muscle Nerve 10:603-15, 1987
2) McManis PG, Lambert EH, Daube JR: The exercise test in periodic paralysis. Muscle Nerve 9: 704-10, 1986
3)Fournier E, Arzel M, Sternberg D, et al: Electromyography guides toward subgroups of mutations in muscle channelopathies. Ann Neurol 56:650-61,2004
4)Birkhahn RH, Gaeta TJ, Melniker L: Thyrotoxic peridoc paralysis and itravenous propranolol in the emergency setting. J Emerg Med 18: 199-202, 2000
5)Shayne P, Hart A: Thyrotoxic periodic paralysis terminated with intravenous propranolol. Ann Emerg Med 24: 736-40, 1994

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